
2006年7月、倉敷の美観地区にある馴染みの蕎麦屋・石泉で大原美術館の館長・高階秀爾さん(1932〜)と偶然相席になったことを記念して今更ながらのエントリー(笑)。
倉敷紡績(現・クラボウ)、倉敷絹織(現・クラレ)、倉敷銀行(現・中国銀行)などを経営していた実業家であり社会事業家(ここも注目したいですね)だった大原孫三郎(1880〜1943)が、画家・児島虎次郎(1881〜1929)に世界各国の美術コレクションを蒐集させた大原美術館。ところが、その当時の大原孫三郎は、児島虎次郎への友情から西洋美術の蒐集を命じていたものの、実はその方面にはほとんど関心がなく、趣味の茶道を通じて出会った浜田庄司、バーナード・リーチ、河合寛次郎、棟方志功、芹沢けい介などの作品を愛し、工芸館や東洋館に展示する作品の蒐集に注力していたそうです。
因みに、日本と中華民国による武力紛争・満州事変の事実関係を調査する国際連盟が派遣した国際連盟日支紛争調査委員会(リットン調査団)のメンバーが1939年に倉敷を訪れ、当館のコレクションに仰天し京都や金沢と同様に第2次世界大戦の大空襲を免れたという逸話は有名。1991年の本館リニューアルにより展示空間も広くなり、17世紀以降の西洋絵画からエル・グレコ、ゴッホ、モネなどの印象派、そしてカンディンスキーやポロックなどの現代美術に至るまでのパイオニア的な作品を一連の流れの中で展覧できるようになりました。

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展示会:百年愛された銀行建築を児島虎次郎館へ再生するプロジェクト(終了)
会 期:2021年10月1日(金)〜2022年11月30日(水)
10:00〜16:00
入場料:無料
会 場:新児島館(仮称)
倉敷市本町3
086-422-0005(大原美術館)
大原美術館は、2016年に株式会社 中国銀行から、長年重要な拠点として営業されていた「倉敷本町出張所(旧第一合同銀行倉敷支店)」の建物をご寄贈いただき、「百年愛された銀行建築を児島虎次郎館に再生するプロジェクト」として進めてまいりました。そして、2021年10月1日、大原美術館・新児島館(仮称)として暫定開館いたしました。
COVID-19 パンデミックの影響により、グランドオープンの目途が立っておりませんが、薬師寺主計が設計した建物を少しでも早く公開し、多くのお客様にご覧いただきたいと思い、エントランスホールおよび吹き抜け空間を公開しております。
暫定開館中は、ヤノベケンジの作品・《サン・シスター(リバース)》および《赤漆舟守縁起猫》をご覧いただけます。また、ミュージアムショップ(株式会社 三楽)も期間限定で展開しております。


大原美術館と向かい合うように建っている黄緑色の瓦が特徴的な大原孫三郎の別邸・有隣荘(別名:緑御殿)は、1928年に完成。建築家・薬師寺主計(1884~1965)や数々の名庭を手掛けた7代目・小川治兵衛(1860~1933)といった名手たちにより丹念に作り上げられました。近年、春と秋の特別展示の際に一般公開されています。
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特別展:春の有隣荘・特別公開(終了)
モノクローム
会 期:2023年4月28日(金)〜5月7日(日)
10:00〜16:00
入館料:1,000円(一般)
会 場:大原家旧別邸・有隣荘
倉敷市中央1-3-18
086-422-0005(大原美術館)
倉敷の誇る近代建築・有隣荘。大原美術館創設者となる大原孫三郎(1880~1943)の私邸兼迎賓館として、1928年に誕生しました。東西両洋の建築様式と意匠、そして見事な屋根瓦や庭を特色とする名建築です。この度、大原美術館は通常非公開である有隣荘の門を開き、皆様をお迎えします。
古くから多くの芸術家たちは、モノクローム・・・単色という限定された条件下での表現に関心を寄せてきました。東洋では「墨は五彩を兼ねる」といい、モノクロームの内に無限の色彩の広がりを観てきたように、そうした感性はかつて日本の建築を彩った調度や芸術の中にも見出されます。本展では、大原美術館のコレクションの中からモノクロームの作品を選び、アール・デコ調の洋間や風格ある書院造の和室など、有隣荘の建築空間の中で展覧します。各室の和洋にとらわれず、広く海外や日本の近現代美術の中から作品を選ぶことで、空間と作品が織りなす新たな魅力を探ります。
また、空間の連続性を特色とする日本建築では、部屋どうしのつながりだけではく、室内から庭へと続く空間の広がりや、そこに映し出される四季折々の自然との共演が大切にされてきました。本展が開催される春、有隣荘の庭は初々しい新緑で彩られます。こうした庭の景色と、室内に佇むモノクロームの作品との調和・対比もお楽しみいただければ幸いです。

大原美術館・本館の設計も薬師寺主計。1930年4月に着工して、11月5日に開館という突貫工事で、施工費5万円(現在の価格で1億5千万円)でしたが、前年の1929年は、ニューヨーク株式市場の大暴落に始まる世界恐慌が日本も直撃し、倉敷紡績も大幅な欠損に見舞われます。そのような状況の中で、日本国内最初の私立西洋近代美術館が出現した事は驚天動地の大事件だったでしょう。尚、左右にロダン作の彫像を配した本館玄関は、石造建築のように見えますが、イオニア式の柱も鉄筋コンクリート造で、左官が表面を石粉をモルタルと混ぜた人工石材で模しているとの事。尚、倉敷川に架かる今橋(5種20面の龍の模様が彫られている)は、児島虎次郎によってデザインされたもので、辰年生まれの大原孫三郎に因んでいるとお聞きしました。