古い漁具

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アイキャッチ画像は、地元の漁師から譲って貰った土師器の風合いを持つ素焼きの漁具・はぜ壺。胴部分の曲面の脹らみや穴の形状に民芸的な趣もあり数点コレクションしています。先日、倉敷民藝館に19世紀・江戸時代のハゼ壺が展示されている事を知り記事にしてみました(笑)。

はぜ壺@倉敷民藝館

はぜ壺は、海岸の浅瀬に「壺はえ縄漁法」の要領で仕掛けておき、潮の頃合いを見計らって引き上げる。その際、船の上に大きなタマ網を置いておいて、その上から壺の中に入っている獲物を海水と共に排出して捕獲するのですが、時にはイイダコやメバルなどが入っていて漁師を喜ばせたという。横に開いている丸い穴は、海面より引き上げる時に海水が抜けて中の獲物を逃げさせない工夫。マハゼがつがいで入る習性に着目し上部に2つ開けた穴も、結果的に、一方の穴から空気が入る排水性、ロープの結び易さ、海底での座りに配慮した形状となって上手く完成形になっている。

1970年代までは瀬戸内海で盛んに使われていたようですが、河口域の乱開発によりマハゼの姿が急速に消えてしまい、この漁法も廃れ、これらの壺は遺棄されてしまった。

倉敷民藝館

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:外村吉之介 生誕125年
    少年民藝館
会 期:2022年11月11日(金)~2023年12月3日(日)
    9:00〜17:00
入館料:1,300円(一般)
会 場:倉敷民藝館
    倉敷市中央1-4-11
    086-422-1637

このたび倉敷民藝館は、外村吉之介 生誕125年 特別企画展 少年民藝館と題した展覧会を開催いたします。2023年は、初代館長・外村吉之介の生誕125年および没後30年にあたる年であり、さらに倉敷民藝館開館75年の記念の年でもあります。

『少年民藝館』は、外村初代館長が、わかりやすく民藝について解説した名著です。1984年に出版されて以来、2011年には再版され、多くの人に読まれています。「健康で無駄がなく威張らない美しさを備えてよく働く、良い友だちをみなさんに紹介したいと思って、世界中の美しい工藝品を選んで並べました。」―『少年民藝館』まえがきより

今回の展覧会では、この本に取り上げられた作品のうち、当館所蔵品を中心に約130点の展示を予定しています。10年ぶりとなる少年民藝館展をお楽しみ頂けますと幸いです。

小型の蛸壺や土垂

こちらも同じ漁師から譲って貰ったイイダコ(飯蛸)を捕獲する小型の蛸壺や漁網を沈めるための土垂(どすい・別名:イワ)。素焼き製で長さ5〜12cm、紐(クモ)を通すための孔や凹みがある。この種のものは、縄文・弥生時代の遺跡からも多く出土していますが、これは近年のもの。海底を長年引き回され、肌がなかなか良い景色になっています。土垂は、茶事の蓋置きとしても人気があると聞きました。

むかし下津井回船問屋

はぜ壺は、倉敷市児島にある明治時代の回船問屋の建物を復元した資料館・むかし下津井回船問屋にも展示されていました。

ご案内をいただきました! 🤣

催し物:第3回 フレふれマルシェ(終了)
    親子で楽しむ夏休み
日 時:2023年7月31日(月)
    10:00〜15:00
会 場:むかし下津井回船問屋
    岡山県倉敷市下津井1-7-23
    086-479-7890

ハンドメイド雑貨&アクセサリーや、スイーツ&フード、ドリンク・ショップなど23店舗が集まります。

瀬戸内海歴史民俗資料館

瀬戸内海周辺の歴史と文化財を学ぶには、建築家・山本忠司さんが手掛けた瀬戸内海歴史民俗資料館の展示品もお勧め。瀬戸内海を一望出来る景勝地・五色台の山上に鎮座。2021年、館内に「瀬戸内ギャラリー」を設け、常設で語れない企画展示を行なっている。観覧無料!

山本忠司(1923~1998)は、大川郡志度町(現・さぬき市志度)に生まれ、1943年に京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)図案科に入学。京都工業専門学校建築科を卒業後は香川県土木部営繕課技師として香川の戦後復興のために働き始める。また、金子正則知事(1907~1996)の指揮の下、丹下健三(1913~2005)の県庁舎計画にも携わり始める。

山本は、この経験を通して、地元香川で培われてきた木工事や石材加工の職人技の高さや素材の豊富さ、手仕事として実感できる伝統の厚みに目覚めていく。その成果は、香川県立武道館(1964)や栗林公園・讃岐民芸館(1970)などに結実する。また、県庁舎の石工事を担当した地元の岡田石材工業の岡田 賢(1924~2011)や彫刻家の流 政之(1923~)ら気心の知れた仲間たちと、自らの創造の原点となる喫茶・城の眼(1962)を完成させる。

そして、日本建築学会四国支部の民家研究グループの一員として携わった民家調査も、その視点を確かなものにしていった。調査の一部は、1970年に、彫刻家のイサム・ノグチ(1904~88)の邸宅、通称 “イサム家” となる丸亀の庶民的な武家屋敷を移築する設計の仕事としても実を結ぶ。続いて取り組んだのが瀬戸内海歴史民俗資料館(1973)であり、これによって県の建築技師としては初となる日本建築学会作品賞を受賞する。

このように山本は、建築課を率いて地元香川に根づく建築の姿を模索しながらも、大江宏、芦原義信、大髙正人、浅田孝ら著名な建築家に仕事を依頼して、香川県の公共建築の水準の向上にも努めた。また、浦辺鎮太郎や松村正恒、神代雄一郎らとの親交を深め、共同で瀬戸内海建築憲章(1979)を発表する。山本は、2010年に始まる瀬戸内国際芸術祭に結実する思想的な広がりをこの時点で提示していたのである。

香川県建築士会:建築ツアー資料(要約)

ご案内をいただきました! 🤣

企画展:そらあみ
    アートで文化遺産を編みひらく
会 期:2023年10月14日(土)〜11月26日(日)
    9:00〜17:00
講 師:五十嵐靖晃
入館料:無料
会 場:瀬戸内海歴史民俗資料館
    香川県高松市亀水町1412-2
    087-881-4707

瀬戸内海歴史民俗資料館は、1973年に開館し、今年で50周年を迎えます。これを記念して、アーティストの五十嵐靖晃さんと協力して取り組むアートプロジェクトを行います。

瀬戸内海で使われている漁網を広げてみると、それぞれの大きさや形、網目の大きさなどは実に変化に富んでいます。その一つ一つが海底地形や潮流、魚の習性などをふまえて作られたもので、網はまさに海の自然と人々の知恵が生み出した瀬戸内文化の象徴と言えます。

50年の間に各地から集まってきた大切な文化遺産の数々。その上で編み広げていく網の目を通して、どんな風景が見えてくるでしょうか。瀬戸内の人々の文化やくらしを伝えるモノたちに遺された物語を、《そらあみ》が編みひらきます。

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