古い漁具

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アイキャッチ画像は、地元の漁師から譲って貰った土師器の風合いを持つ素焼きの漁具・ハゼ壺。胴部分の曲面の脹らみや穴の形状に民芸的な趣もあり数点コレクションしています。先日、倉敷民藝館に19世紀・江戸時代のハゼ壺が展示(明治時代の回船問屋の建物を復元した資料館・むかし下津井回船問屋にも)されている事を知り記事にしてみました。

ハゼ壺は、海岸の浅瀬に「壺はえ縄漁法」の要領で仕掛けておき、潮の頃合いを見計らって引き上げる。その際、船の上に大きなタマ網を置いておいて、その上から壺の中に入っている獲物を海水と共に排出して捕獲するのですが、時にはイイダコやメバルなどが入っていて漁師を喜ばせたという。横に開いている丸い穴は、海面より引き上げる時に海水が抜けて中の獲物を逃げさせない工夫。マハゼがつがいで入る習性に着目し上部に2つ開けた穴も、結果的に、一方の穴から空気が入る排水性、ロープの結び易さ、海底での座りに配慮した形状となって上手く完成形になっている。

1970年代までは瀬戸内海で盛んに使われていたようですが、河口域の乱開発によりマハゼの姿が急速に消えてしまい、この漁法も廃れ、これらの壺は遺棄されてしまった。

左:ハゼ壺@倉敷民藝館(2016) 右:ハゼ壺@犬島(2010)

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:泥絵
会 期:2025年9月9日(日)~11月30日(日)
    10:00〜17:00
入館料:1,200円(一般)
会 場:倉敷民藝館
    倉敷市中央1-4-11
    086-422-1637

泥絵とは、江戸時代後期から明治時代にかけて、安価な泥絵具を用いて紙に描かれた絵画のことを指します。泥絵はどれも無名の画工によって描かれており、画工たちは建物や人物の描写を簡略化することで、同一の絵を量産し、町民や旅人が気軽に購入できる土産物として販売していました。

多くの泥絵がオランダや中国から入ってきた透視図法を意識して描かれていることも特徴で、特に江戸の大名屋敷を描いた泥絵では、和風の題材でありながらも独特な遠近感が強調され、異文化の融合によって生じた表現のかたちを見ることができます。

本企画展では、倉敷民藝館が所蔵する泥絵10点と合わせて、泥絵と同じく無名の画工によって描かれた、江戸時代のガラス絵2点を展示予定です。倉敷民藝館所蔵の泥絵を一同に展示するのは初の試みとなります。

この機会にぜひ泥絵の魅力をお楽しみください。

画像右上にハゼ壺@むかし下津井回船問屋(2011)

ご案内をいただきました! 🤣

催し物:開館30周年記念(終了)
    歌と踊りの祭典
日 時:2025年11月9日(日)
    10:00〜12:00
入場料:無料
会 場:むかし下津井回船問屋 蔵ほーる
    岡山県倉敷市下津井1-7-23
    086-479-7890

小型の蛸壺や土垂

こちらも同じ漁師から譲って貰ったイイダコ(飯蛸)を捕獲する小型のタコ壺や漁網を沈めるための土垂(どすい・別名:イワ)。素焼き製で長さ5〜12cm、紐(クモ)を通すための孔や凹みがある。この種のものは、縄文・弥生時代の遺跡からも多く出土していますが、これは近年のもの。海底を長年引き回され、肌がなかなか良い景色になっています。土垂は、茶事の蓋置きとしても人気があると聞きました。

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