越後妻有 大地の芸術祭

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瀬戸内国際芸術祭のボランティアサポーター・こえび隊の「越後妻有 大地の芸術祭 2015 に行こう! ツアー」に誘われ、これ幸いと参加しました。アイキャッチ画像は、美術家・蔡 國強さんのインスタレーション・蓬莱山@越後妻有里山現代美術館 MonET(建築設計:原 広司。当時の名称は、越後妻有交流館・キナーレ)。

こえび隊の朝礼@キナーレ(2015)

初日に案内されたのは、Air for Everyone(金属職人の家)、土石流のモニュメント最後の教室、家の記憶、ザ・キュウリ ショー@黎の家、脱皮する家。上郷クローブ座レストランでの昼食後は、総合ディレクターの北川フラムさんから、大地の芸術祭の誕生から今日までの歩みや、越後妻有地域が抱えている課題などについて解説していただきました。

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:田中藍衣
    リバース ストリング
会 期:2024年1月13日(土)〜3月10日(日)
    10:00〜17:00(火、水曜は定休日)
鑑賞料:1,200円(一般)
会 場:越後妻有里山現代美術館 MonET
    新潟県十日町市本町6-1
    025-761-7766

ざらざらとした質感、ざわざわとしたよるべなさ。その中にきらきらときらめく光の反射。寂しさや薄暗さを閉じ込めて、色彩や光を発する岩絵具は鉱石を砕いて粒子状にした絵の具です。そのような画材を使って絵を描く愛知県出身の画家、田中藍衣の個展を開催いたします。

点を打つことで、線を描き、それがいつの間にか面となっている。図示と描画のあいだを自在に行き来しながら描く彼女の絵画は、私たちが生きている地球や宇宙で起こっている循環やそれが成り立つ法則を不思議に思いながら追いかける彼女のテーマへの姿勢とも重なります。

「リバース ストリング」というタイトルは、新潟県出身の詩人である西脇順三郎が随筆で残した蕎麦の描写「荒々しくかためたひも」に由来します。絵具が塗りかためられることで、かたちを持ち、絵画となるとき、逆転して注目されるのは粒子のきらめきです。

本展は雪がこんこんと、時に、ごうごうと降り積もる真冬の十日町を舞台に、線から圏までを一度に描いてぐるりと組み換え可能な世界をつくろうと試みる画家の新作で構成します。

上郷クローブ座レストラン(2015)

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:大地の芸術祭
    越後妻有アートトリエンナーレ 2024
会 期:2024年7月13日(土)〜11月10日(日)
    10:00〜17:00(火、水曜は定休日)
鑑賞料:4,500円(パスポート・一般)
会 場:越後妻有の6地域
    新潟県十日町市
    025-757-2637(十日町市総合観光案内所内、芸術祭企画係)

3年に一度開催される世界最大級のアートフェスティバル・大地の芸術祭。2024年1月13日(土)~3月10日(日)の期間、「越後妻有2024 大地の芸術祭 冬」を開催中! 雪に覆われた越後妻有の魅力満載! 冬のプログラムは見るもの、食べるもの、遊ぶもの、すべてが楽しみの宝庫。越後妻有里山現代美術館 MonET、まつだい「農舞台」フィールドミュージアムを拠点に、越後妻有の冬を体感できる企画が盛りだくさん。越後湯沢駅発着のオフィシャルツアーも運行予定です。

こちらの地域も、瀬戸内国際芸術祭の恩恵を得ている玉野市と同様、人口減少という課題を完全に克服する事は出来そうにないけれど、大地の芸術祭のお陰で「交流人口」が増加した事で国からの予算が地元に回るようになったという説明を受けました。知恵と継続が大事なのですね。

最後の教室@旧東川小学校(2015)

こちらは、越後妻有 大地の芸術祭 2006 で美術家・クリスチャン・ボルタンスキー(1944〜2021)と舞台美術家・ジャン・カルマンさん(1945〜)が公開した作品・最後の教室。四角い透明な箱を人が去った山里の空き家に見立て、命の儚さや尊厳を表現した「人間の不在」。会場は、空き家と廃校プロジェクトの一つ・旧東川小学校の校舎と体育館。宿は、1989年に廃校となった松之山町立三省小学校を越後松之山体験交流施設として再生した三省ハウスでした。

翌日に訪ねたのは、越後妻有里山現代美術館・キナーレ、絵本と木の実の美術館、下条茅葺きの塔、もぐらの館、うぶすなの家、Kiss & Goodbye、秋山郷結東温泉・かたくりの宿などを廻りました。それにしても、当地の冬の想像を絶する豪雪の中での暮らしぶりを聞くに及んで、改めて温暖な瀬戸内海での暮らしに感謝しつつ、わが暮らしの甘っちょろさに思いが至った次第です 😅

農舞台(2015)

こちらは、キネマと音楽の夕べ in 越後妻有まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」。作り上げたのは、クラシックからジャズ、ワールド・ミュージックまで、あらゆるリード楽器を吹きこなす洗練された感覚を持つサックス・プレイヤーの鈴木広志さん。ファッション・ショーの音楽、芸術家とのコラボなど、音楽によって独特のファンタジーを展開し、各界から注目を集めるピアニスト&アコーディオン奏者で作曲家の大口俊輔さん。ドラム・セットからおもちゃまで、即興音楽からポップスまで、さらに和モノ的感覚もベースに持つ異色ドラマーの小林武文さん。無声映画解説者としての顔の他、自作アニメ、舞台、ドラマ、声優、寄席とマルチに活躍する新時代活動弁士の坂本頼光さんです。これら異能の4人と20世紀初期の無声映画が時空を越え、現代に実現する現在進行形のパフォーマンス・・・「大学は出たけれど」、「チャップリンの冒険」、「國士無双」、「血煙高田馬場」が上映されました。

キネマと音楽の夕べ in 直島(2014)

因みに、こちら2014年の「キネマと音楽の夕べ in 直島」では、「子宝騒動」、「日の丸太郎・武者修行の旅」、「海の宮殿」、「ランプの魔人」の作品が上映されました。

こちらは、北川フラムさん(アートフロントギャラリー)の愛読書だと聞いて図書館から借りてきた木村尚三郎さんの著書・「耕す文化」の時代。内容としては、都会の若者や退職したサラリーマンが「地方」や「農耕」を拠り所にしようとしている現状を、自分たちが暮らす土地を改めて愛し、家族を大切にしたいという指向と捉え、それを蒸留酒と醸造酒の性格、イギリスやドイツとフランスやイタリアの国民性、プロテスタントとカトリックの宗教観の違いなどを象徴的に対比させつつ、近代工業社会がもたらした拝金主義が個々人を孤独に向かわせた反動だろうとし、現代日本人が必要とすべきもの、幸せに生きて行くには、何が必要不可欠なのかを爽やかな口調で提示している。

確かに、本書で紹介されている成功例や活動例、提案などの論旨は耳に心地よい。しかし、現実世界には、コミュニティに根ざした良い行いをする人々ばかりが暮らしている訳ではなく、こうした性善説に基づくユートピア論は、読者個人としては勇気づけられるかもしれないが、現実に行動した場合に様々な障害に直面しするだろうから、余計なお世話かもしれないが、面食らって落胆しない柔軟な心を備えておかなければならないと付け加えておくべきかもしれない。

因みに、そもそも成功例というのは元々希有なものであって、それさえ歩みを停めて手をこまねいていていれば、確実に衰退&破綻することを肝に銘じておかなければならない。本書で褒めちぎっていたフランスの高速増殖炉・スーパーフェニックスが1998年に閉鎖されたり、ミニテルがインターネットに統合された事からもそれは明白なのかなと。そうした気になる文脈もありましたが、国内外から現代アートの聖地・ベネッセアートサイト直島を目指す年間数十万人もの観光客や船乗りたちと交流する機会のある宇野港の「耕す文化」という舞台で、暮らしに必要な収益も図る手段などを夢想する楽しみも得られて有益でした。ご一読をお勧めします 🤣

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