防御アート・直島銭湯 I ♥ 湯

  • ブックマーク

美術家・大竹伸朗さんが手掛けた直島銭湯・ I ♥ 湯。公益財団法人・福武財団が直島住民の交流と福祉を目的に建設。運営は、直島観光協会に委託されています。 1度に利用できるのは、男湯、女湯とも8名程度。

大竹先生から色々と教わったの。このペンギンは、ペルちゃん。浴室にいる象さんは、女の子でサダコさん。このタイルは、インドネシア製。あのオブジェは、隣の家から譲ってもらって大竹先生がご自分で取り付けられたの。ちょっと、こっちに来てご覧なさい。あの階段を登って、鳥たちが巣箱に入るんだって!」と、楽しそうに解説して下さった羽根田文子さん。

直島銭湯・ I ♥ 湯が開業して数日後の2009年8月、写真撮影に訪れてみたら思いも寄らない事態になっていました。「先生の素敵なボインちゃんを毎日眺められるのは嬉しいのよ。でもね、玄関に置いている工事用コーンを跨いで入って来て、フェンスに背をもたれかけて写真を撮る観光客が多くて迷惑しているのよ。何とかならないものかしら!」。

左が直島銭湯。右が羽根田邸(2009)
羽根田邸の玄関(2009)

彼女は、観光客との触れあいを楽しみにしていただけに、その困惑は大きく・・・

「じゃあ、僕が一肌脱ぎましょう!」

「えっ、ご迷惑でないかしら?」

なんて、やりとりがありまして(笑)・・・アートにはアートで対抗しようと、美術家の佐藤史仁さんに白羽の矢を立てた次第です。

その後、色々な紆余曲折がありましたが、佐藤さんの作品も出来上がり設置に直島に赴く旨を羽根田文子さんに告げたところ、なんと、ご主人の德義さんが亡くなったと知らされました。まさかこのタイミングでと絶句しました。結局、作品・マネーバードの設置は、2010年8月まで延期になったのですが、これら一連の顛末をニューヨークを拠点に活動されていた映像作家の上杉幸三マックスさんが面白がってくれて宇野直島チャンネルで動画を配信して下さいました 😊

マネーバードの設置@羽根田邸(2010)

この懐かしいプロジェクトを振り返ってみれば、かろうじて果たした僕の役割は、羽根田文子さんから悩みを告げられ、その解決策を佐藤史仁さんに求めた事だけでした。それでも、自分の立場からすると、今回のような事態に対して、他にアクションを起こそうとする人が居なかったことに注目して欲しい。彼女が困っている事に気づかない筈はない。でも手を差し伸べようとはしない。それは何故なのか?

たとえば、今の直島で暮らす人々には、福武財団ベネッセアートサイト直島の活動に対して、表だって異議申し立てが出来ないような無言の圧力が生じているのではないだろうか? 僕には、それがトラブルを恐れる自己抑制的思考に伴う不作為と感じているのですが、それは数多の事例にも当てはまる普遍的な課題だと思います。

この記事を書いた人