はしまや呉服店

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磨き上げられたドイツ製のガラス窓越しに見る店内には、着物が一枚も見当たらない。そのただならぬ気配に、自分のような門外漢は暖簾をくぐることさえためらってしまいます(笑)。1995年の春、陶芸家・河井寛次郎の没後30年記念展@大阪高島屋で出会った方から、「岡山にも凄いコレクターがいますね」と教えていただいたのが、倉敷市東町にあるはしまや呉服店(楠戸家)。

同年の秋、4代目当主・楠戸 年(みのる)さんの奥様・敏子さんにパートナーと一緒に敷地内を一通り案内していただき、最後に通された米蔵でお茶をいただいたのは、忘れられない思い出。当主と濱田庄司の作品が鎮座していました! そして、フランス人の哲学者・ジャン・ポール・サルトル(1905〜1980)、イギリス人の陶芸家・バーナード・リーチ(1887〜1879)、ドイツ人の建築家・ヴァルター・グロピウス(1883〜1969)も訪れた母屋は、翌年に国の重要文化財に指定されます。

過日、樹齢250年以上という見事なサツキの一般見学会で再び楠戸家を訪ねる機会を得たのですが、あの時の米蔵は、夢空間はしまや(現・atelier & salon はしまや)に改装され、母屋の座敷には、芭蕉布に紅型で染め上げた見事な着物が彩りを添えていました。粋とは、こういうものでしょう。

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

展示会:はじめましての衣展(終了)
会 期:2023年7月28日(金)~ 7月30日(日)
    11:00〜16:30
主 催:Petits Soins
会 場:atelier & salon はしまや 主屋
    倉敷市東町1-20
    086-451-1040

necst の社名で事務服や学生服などの縫製を行なっている倉敷の小さな工場から生まれたブランド・Petits Soins(プティット ソワン)初の展示会です。

この度、私たちが長年培ってきた縫製技術を生かして、暮らしに寄り添う衣類のオリジナルブランドを立ち上げ、倉敷東町のはしまや(主屋)にて展示会を開催する運びになりました。

Petits Soins(プティット ソワン)は、小さな気配り、心遣いを意味します。本展では、普段の装いにプラスして着用できいるエプロンや作業着のような暮らしのユニホームが揃います。身体に心地よく馴染み、毎日を気持ちよく楽しく過ごしていただける一着に出会っていただけますように。

島崎 信先生@はしまや呉服店(2013)

こちらは、ハルミ・ファインクラフトの守屋晴海さんが開催された「生活デザインセミナー」の会場となったはしまや呉服店の母屋での島崎 信先生(武蔵野美術大学名誉教授)。セミナー終了後、島崎先生と30分ほど歓談させていただいたのですが、先生の北欧デザインへの敬愛、デンマーク人の家具デザイナー・ハンス J. ウェグナー(1914〜2007)やボーエ・モーエンセン(1914〜1972)との思い出話に心躍りました。請われてツーショットに収まったのを契機に佐渡の太鼓芸能集団・鼓童など、先生の「仕事」に寄り添わなければと思った次第です。

島崎先生は1932年、東京・本郷で誕生され東京藝術大学美術学部工芸科図案部卒。デンマーク王立芸術アカデミー建築科修了。武蔵野美術大学工芸工業デザイン科・名誉教授。日本フィンランドデザイン協会・理事長。北欧建築デザイン協会・副会長。鼓童文化財団・理事長。NPO 法人東京・生活デザインミュージアム・理事長。有限会社島崎信事務所・代表。

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催し物:フィールドオブクラフト倉敷 2023(終了)
会 期:2023年5月13日(土)〜5月14日(日)
    10:00〜17:00
会 場:倉敷市芸文館前広場
    倉敷市中央1-18-1
    070-5302-8207(倉敷事務局)

全国のクラフト作家73組による作品の展示と、10組のワークショップを開催します。

こちらは、京都の陶工・河井寬次郎(1890〜1966)が過ごした住宅と仕事場を公開した河井寬次郎記念館。彼の著作物などから知りえた迷い、発見、実験を繰り返していた初期から、愛情、信念、悟りを感じさせる晩年までの創作姿勢を少しでも感じられたらと時々訪ねていますが、河井一門の作品を長年扱っている近所の骨董店主から、「最近、記念館で盗難が頻発しているのですよ」と告げられ、なんだか河井寛次郎さんの体温が奪われていくような気がして寂しく思いました。

河井寛次郎は、1920年に5代目・清水六兵衛より陶窯を譲り受け独立。1937年のパリ万博、1957年のミラノ・トリエンナーレ展でグランプリを受賞。当時、高島屋の宣伝部長をしていた川勝堅一(1892〜1979)が本人に内緒で応募し世界にその名を知らしめた事は、知る人ぞ知る逸話。

記念館の建物は、作陶をはじめ、木彫、文章を通じて良き精神を追求した聡明で心豊かな生活を追体験できる空間です。囲炉裏のある部屋や中庭、茶室、工房などで佇んでいると、まるで自宅にいるように和んでしまいます。島根県能義郡安来町の棟梁の次男として育っただけに自ら設計、島根県安来市で大工業を継いでいた兄・善左衛門の手によって1937年に建てられたそうです。没後7年の1973年に記念館として開館。館長は、一人娘の河井須也子さん。主任は、孫にあたる荒川洋子さん(2004年5月31日、追記)。

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企画展:河井武一・透・亮輝 三代展
    京都民窯の系譜
会 期:2023年9月1日(金)~ 9月13日(水)
    10:00〜18:00(最終日は、17:00まで)
入場料:無料
会 場:京都陶磁器会館
    京都市東山区東大路五条上ル遊行前町583-1
    075-541-1102

河井武一は、叔父である河井寛次郎より薫陶を得て、京都・亀岡市に南丹窯を築き、その技を後世に継承してきました。 二代目・河井 透は、父・武一、大叔父・寛次郎に師事、技術とその精神を独自の作風に落とし込み、三代目・河井亮輝は、河井家が培ってきた技術と精神をもとに、幅広く作品を手掛け、現代の民藝作家として作陶を続けています。 本展覧会では、代々継承し、新たに作り上げてきた河井家独自の「京焼民藝」の軌跡をご覧いただけます。 ぜひご高覧ください。

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