ウインクチェア

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アイキャッチ画像は、1980年に喜多俊之さんカッシーナから発表したウインクチェアニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションにも選定され、名作との誉れ高いようですが、この第一世代は、カッシーナの製造とは思えない粗悪品でした。背もたれの角度を変化させるノブの操作感は重たく、床面と接触するクッション・ゴムの耐久性も低く、ポリウレタンフォームのクッション材もヘタリ易かった(涙)。購入から約10年後、構造材の番線が座面を突き破り、一度張り替えたカバー材も擦り切れ廃棄処分に。

自宅リビング(1990)
アントニオ・チッテリオさん喜多俊之さんの対談@イタリア文化会館(2023)

但し、着せ替え用のヘッドレストなどのオーバーカバーが「遺品」として残っているので、現行製品が問題無しなら本体の再購入も考慮しても良いのかと(笑)。

こちらは、自宅を建てた1982年に友人からプレゼントされたスーパーレジェーラ(d:ジオ・ポンティ )と Y チェア(d:ハンス J. ウェグナー)。どちらも2004年に座面を全面張り替えましたが、前者は倉敷の工房に依頼して18,900円。後者は、イタリア本社への輸送費も含めて107,730円でした 😅

余談ですが、カッシーナ・イクスシーの前身・インターデコールが創業した1975年頃、社長の武藤重遠さんから月刊誌・JAPAN INTERIOR DESIGN に掲載する広告デザインを担当した縁もあり、商品を社員価格で譲っていただくなど、東京時代は親身に接して貰いました。ところが2008年3月、スーパーレジェーラの修理を依頼したサンライフ・ハナオカの花岡皓之さんからに武藤さんが逝去したと聞かされました。憧れの方であり残念でたまりません。

篠山ギャラリー KITA’S(2018)

喜多俊之さんが監修されていたギャラリー・アニマ(設計:安藤忠雄)は、2010年の春に篠山ギャラリー KITA’S として兵庫県篠山市へ移転しています。

篠山ギャラリー KITA’S に併設のカフェ・徐庵(左)と喜多俊之さんがプロデュースした宿泊施設・障子庵(右)

展覧会:喜多俊之・作品展(終了)
    TIMELESS FUTURE
会 期:2021年10月9日(土)〜12月5日(日)
    10:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館料:1,200円(一般)
会 場:西宮市大谷記念美術館
    兵庫県西宮市中浜町4-38
    0798-33-0164

日本とイタリアを拠点に活躍するプロダクト・デザイナー、喜多俊之(1942〜)の展覧会を開催します。有機的なフォルムを持ち、人間の動きに寄り添うようにパーツを動かすことのできる椅子《WINK》は、イタリアで発売されるやいなや、一躍人気を博し、“Toshiyuki Kita” の名を世界に広めました。2001年に発表された《AQUOS C-1》は、テレビの新しい形を提案すると同時に、新時代のライフスタイルにも影響を与えました。自由な感性に溢れる喜多のデザインは国境を超えた価値観を有し、日本のみならず世界各国で認められており、ニューヨーク近代美術館やポンピドゥー・センターなどにも収蔵されています。

時代を予見する新しいデザインを生み出す一方で、喜多は日本の伝統工芸の持つ力に敬意を払っており、美濃和紙を使った《TAKO》は、和紙の強靭さとその特性をうまく使用した照明としてヨーロッパを中心に大ヒットし、和紙の素晴らしさを世界にアピールしました。喜多は伝統工芸の保存のため、現代の暮らしの中で違和感なく永続的に伝統工芸が使われるためのデザインを提案しています。またサスティナブル(持続可能)な社会への取り組みとして、地域に根ざした素材の活用も近年の喜多のデザインにおける大きなテーマです

喜多のデザインの根底には、「素敵な暮らし」への願いがあります。現在を生きる私たちだけでなく、未来に生きる人々が「素敵な暮らし」を共に楽しむため、この展覧会が「今、私たちが考えなけれがならないこと」のヒントになることを願っています。

おまけ:人間と芸術・喜多俊之

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