植田正治写真美術館

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1996年1月、雪が降りしきる中(現在は、冬季休館です)、中国地方の最高峰・大山の麓に鎮守さなが佇む植田正治写真美術館(建築設計:高松伸)を訪れました。第一印象は、個人美術館にこれほどの広大な空間を与えるのは贅沢すぎと思ったのですが、館内には天衣無縫がいっぱい詰まっていて得心。外界とシンクロする空間構成も見事で、3階の石庭に至るドアを開けた瞬間に目に飛び込んでくる風景は、きっと記憶に残るでしょう。

それにしても、このような美術館が日の目を見るまでには、さまざまな紆余曲折があったことでしょう。この仕事に関わられた全ての関係者に敬意と感謝を捧げたい。植田正治さん(1913〜2000)は故人になりましたが、優秀な学芸員に支えられる素敵な美術館であり続けてくれるでしょう。

館内から大山を望む(1996)

館内の「逆さ大山」を映し出す映像展示室に使われているレンズは、ベス単と同じ機構のレンズを発売していた事のある株式会社 清原光学が製作したそうです。「ベス単写真帖・白い風」(1981)を発表した頃に植田さんと一緒に山陰を歩かれた方に教えていただきました。

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:植田正治
    あの頃の「松江」
会 期:2026年3月1日(日)~6月7日(日)
    9:00〜17:00(入館は16:30まで)
    火曜日は休館(祝日の場合は、翌日)
入館料:1,000円(一般)
会 場:植田正治写真美術館
    鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3
    0859-39-8000

植田正治の写真集『松江』は、随筆家・漢東種一郎のエッセイとともに、1978年に出版されました。植田は1960年代から、松江そのものを被写体として、「水の都」と呼ばれるこの街の四季折々の表情や、そこで暮らす人々の素朴な姿を意欲的に撮りためていました。

この写真集の中で、「私にとって、子供の頃の松江は、いつも、行楽地であった」と当時を振り返りながら、境港に暮す植田が幼い頃から遠足、花見、祭り見物などでよく訪れていたことを記しています。当然ながら、松江の街並みには親しみがあり、なじみ深い場所でした。格子のある家屋や老舗のたたずまい、大小さまざまな古い橋など、昔ながらの面影をたたえる松江の街はしみじみとした静けさを漂わせ、また盆の花市、松江大橋を行き交う人々、堀沿いを自転車で走る人の姿からは、素朴さや温かい人情が感じられます。

一方で、人気のない路地や街並みの風景は、歴史のある街並が持つ独特のぬくもりとは別に、幼き日に感じた「不安」や「怖さ」といった、心の奥に残る感情までもが映し出されているかのようです。つまり植田の記憶は、具体的な風景や情景ばかりでなく、ある種の気配や感情とともに蘇り、現実の風景と結びついているのでしょう。移りゆく季節のなかで、カメラを手に小さな発見を繰り返しながら、現実の風景と自身の記憶を重ね合わせ、年月をかけて撮影し続けたのです。


小泉八雲こと、ラフカディオ・ハーンも讃えた美しい松江は、多くの人々が訪れる山陰を代表する景勝地です。みなさんの松江に対するイメージや思い出を植田の写真と重ねながら、“あの頃の「松江」”をご堪能ください。

出雲大社・拝殿

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を

出雲地方は、神話の国としての親しみがあります。大国主神から国を譲られた(奪った)天照大神が、お礼に(祟りを畏れて)、稲佐の浜に天日隅宮(あめのひすみのみや)を建て、第二子である天穂日命(あめのほひのかみ)に仕えさせた(幽閉させた)処とされる出雲大社。そして、その傍らに因幡の白兎、八岐大蛇という出雲の壮大な世界を古代・近代史として読み解く重要な鍵となりそうな宇豆柱(1248年に造営された古代出雲大社の本殿を支えていた棟持柱)、358本の銅剣(荒神谷遺跡・国宝)、39個の銅鐸(加茂岩倉遺跡・重文)などが収蔵展示されている島根県立古代出雲歴史博物館があります。

古代出雲大社高層神殿(ストリートミュージアム)  古代・出雲大社本殿の復元(大林組)

宇豆柱と復元された古代出雲大社

この度、60年振りの遷宮にあたり、工事中の屋根に上り、完成した垣の内に入れてもらい、あたりの杉の古木を眺め、学者としては仮説というべきだろうが、今の私の気持ちとしては一つの確信を持った。あたりの杉の高さはおよそ30メートルで、これが日本の杉の高さの平均的上限になる。とすると、杉よりも高く、杉の樹冠の上に社殿を置こうとしたのではないか。

樹冠の上から眺める光景を想像していただきたい。出雲平野を埋める森はあたかも樹の海となり、樹冠は波のようにどこまでも広がり、樹々の波の東から日輪が現れ、そして西の海に沈む。出雲の名のとおり雲が湧き雨も多いから、樹冠の海の上に太陽の吐息のようにして虹も現れるだろう。今も神官が日に2度、御饌(食事)を運ぶそうだが、その昔、階を上り、樹冠の上まで至り、広縁に立って眺めれば、”この光景の主は太陽である” と思ったに違いない。

藤森照信(日本木造遺産

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:ダイコクさん(終了)
会 期:2025年1月22日(水)~3月31日(月)
    9:00〜18:00(入館は閉館30分前まで)
入館料:700円(一般)
会 場:島根県立古代出雲歴史博物館
    島根県出雲市大社町杵築東99-4
    0853-53-8600

いつも笑顔で、私たちを見守る福の神として知られる「ダイコクさん」。寺院では「大黒天」の名で祀られていますが、神社では「大国主神」と表記されています。今回のミニ企画では、仏教ゆかりの「ダイコクさん」と、日本神話・出雲大社ゆかりの「ダイコクさん」を取り上げ、「ダイコクさん」の様々な側面について紹介します。

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