倉敷民藝館

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その土地の素材を活かして作り育てられてきた日用品。それら簡素、質実、無銘柄、謙虚さの中に美を見出した柳宗悦(1889〜1961)は、民芸美論を提唱、1931年に雑誌・「工芸」を創刊し民芸運動を展開します。

その後、ストックホルムの北方民族博物館を見て感激した柳は、1936年、東京の駒場に日本民藝館を開設します。彼の民芸美論を裏付ける場となった日本民藝館は、今も健康的な美しさで輝き溢れています。1948年には、岡山県倉敷市の江戸時代後期に建てられた米倉を活用した倉敷民藝館が誕生。設立に尽力した大原孫三郎(1880〜1943)に招かれた外村吉之介(1898〜1993)が初代館長に就任しています。因みに、外村は民藝の宝庫・九州に熊本国際民芸館を1965年に開館させています。

多くの作家のインスピレーションを刺激したであろう約1万5千点の蒐集品と展示室の2階の格子窓から臨む景色も見事で、1950年に来館した英国の詩人・エドマンド・ブランデン(1896〜1974)は、日本で見た最高の眺めと褒めています。また、1954年7月に来館した建築家・ヴァルター・グロピウス(1883〜1969)も「創造の規範となる仕事の宝庫」との賛辞を与えています。

倉敷民藝館は、その美しい日本の手工藝品の蒐集によって唯々歴史的遺産の鑑賞のためだけでなく、近代的生産の方法を助長する新しい創造の刺戟として、この國全体の文化の重要な保護者である

ワルター・グロピウス
倉敷民藝館(2016)

建物全体が工芸品と称えられる施設なのに、倉敷を訪れる観光客は、「大原美術館は立派だけど、土瓶や茶碗や篭などが並んでいる倉敷民藝館は、入館料を払うに値しない処だ」と思っている人が多いようで、入り口を一瞥しただけで通り過ぎる・・・勿体ない(笑)。外村吉之介の著書・少年民藝館の装丁や、旅館くらしきで提供される日本酒のラベルを染色家・柚木沙弥郎(1922〜2024)がデザインされているのを目にすると、倉敷に暮らす人々と民藝や工芸との深い繋がりを再認識させられます。そして、こうした施設を整えて下さった先人の方々と、間近で暮らせる環境を与えられていることに感謝なのです。

2020年3月、民藝品売り場が入場無料になって拡大リニューアル。魅力が倍増しました。

倉敷民藝館の外観と格子窓からの眺め(2016)

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:倉敷のはなむしろ
会 期:2025年3月25日(火)~9月7日(日)
    10:00〜17:00
入館料:1,200円(一般)
会 場:倉敷民藝館
    倉敷市中央1-4-11
    086-422-1637

はなむしろは「花ござ」「織込花莚(おりこみかえん)」「花むしろ」とも言われ、イ草を原材料とした美しく彩られた敷物です。

岡山県は、かつて日本におけるイ草の一大産地でした。明治以降の一時期は、錦莞莚などの高級品を主体にイ草製品は海外へも盛んに輸出されていました。しかしながら、世界情勢や生活スタイルの変化もあり、次第に生産量が減少していたところ、1930年代以降、芹沢銈介など民藝運動の関係者の助力により再び復興を遂げました。

具体的には、1944年に、岡山県第一経済部長であった山口泉の依頼により、芹沢銈介、そして外村吉之介が、倉敷市西阿知に数日間滞在して、芹沢は三宅松三郎に図案指導を、外村は柄の試し織りの指導を行いました。さらに1955年に、岡山県民藝協会指導下で、はなむしろや畳表を製作することを目的に、倉敷はなむしろ株式会社(現在は廃業)が設立され、1948年に開館した倉敷民藝館の初代館長となった外村が図案の指導を行いました。

本展では、倉敷はなむしろ株式会社の1960年代に製作されたはなむしろ15点を中心に、三宅松三郎商店の芹沢デザイン、外村デザインのはなむしろを一同に展示予定です。倉敷のはなむしろの魅力をご堪能頂けますと幸いです。

常衛門食堂(2021)

物見遊山の際には、食事処の「捕捉」も欠かせないですよね。倉敷では、居酒屋風和食店・常衛門食堂と日本料理店・Bricole(ブリコール)がお気に入り。どちらも人気店なので、要予約ですよ! 🤣

Bricole(2021)

そして、避けて通れないのが、滔々 Gallery(本店)! 消耗品以外のモノを家中に持ち込まないスタイルを実践中ですが、シンプルながらも豊かな暮しを実践するには目の保養も欠かせない。

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:涼月展
    兵頭侑亀(白磁)+ 笹川健一(硝子)+ 紀平佳丈(木)
    吉田佳道(竹)+ アリサト工房(布)+ 森夕香(日本画)
会 期:2025年7月19日(土)〜7月31日(木)
    12:00〜17:00
会 場:滔々 ギャラリー
    倉敷市中央1-6-8
    086-422-7406

 6名の作家による「涼月展」を開催します。素材や表現に涼を感じていただけますように。今展の作家在廊はございません。

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