平等院

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平安時代、後の平等院の範となる「法成寺」を創建した公卿・藤原道長(966〜1028)が、源氏物語の主人公・光源氏のモデルとされる源 融(822〜895)の別荘跡を手に入れ、その息子・藤原頼道(992〜1074)が1052年に大日如来を安置して寺院としますが、1336年の楠木正成と足利尊氏の戦いで数多くの堂宇は残念ながら焼失。アイキャッチ画像は、1053年に落慶供養された唯一の遺構である阿弥陀堂(鳳凰堂)。阿字池に映る極楽浄土を現した姿には、今も訪れる度に震撼させられます。

国宝・阿弥陀堂には、仏師・定朝の作として唯一確証のある本尊・阿弥陀如来坐像が安置され、その周り長押の小壁の高い位置に雲に乗り楽器を演奏したり踊っている52躯の雲中供養菩薩像が配されていたましたが、平等院ミュージアム鳳翔館(設計:栗生 明)が開館した2001年に、それら雲中供養菩薩像は、保存、修理のために取り外され、同館内に移転、展示されるようになりました。時代の変遷の中での必然の出来事だと思いますが、ここでもまた見事なデザイン力が発揮され、空間の濃密な阿弥陀信仰の残像を漂わせることに成功していると思います。

平等院ミュージアム鳳翔館

平等院と並びこの世の浄土を演出した事で知られる奥州藤原氏も、寺の庭に広大な洲浜と松の島を造り、太鼓橋を架けている。また、能舞台の橋掛りは、太鼓状に持ち上がり、橋の下には白砂を敷き、松を立てるのが古の正式で、渡った先はあの世。

洲浜と松を別世界の印とする思想は、どう考えても大陸の内部由来ではなく、海洋性のものだろう。洲浜の最古の例は、奈良の都の宮殿跡から発掘されているが、あるいはいつの時代にか、黒潮に乗って運ばれてきたのかもしれない。

藤森照信(日本木造建築)

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:平等院名品展
    2023-2024
会 期:2023年12月19日(火)〜2024年4月21日(日)
    9:00〜17:00
入館料:600円(拝観料・一般)
会 場:平等院ミュージアム鳳翔館
    京都府宇治市宇治蓮華116
    0774-20-6607

平等院には、平安時代から現代まで幅広い時代にわたる文化財が残されています。本展では、2024年の干支である「辰」に因んだ龍にまつわる文化財や浄土宗開宗850年を祈念して宗祖・法然上人にまつわる文化財を中心に展観いたします。

これらは、平等院が所蔵する多数の文化財の中でも、これまで展観する機会が少ないながらも平等院の歴史を語る上では欠くことのできない名品たちといえます。展示品を通じて、古来より人々を惹きつけてきた平等院の魅力を感じていただけたら幸甚です。会期中無休の予定。

5月5日は、こどもの日。男の子の成長を祝う端午の節句に厄よけにと供えた粽(ちまき)は、日本各地にさまざまな味と形を生み出した。 今から約500年前、初代・道喜が武士を捨てて餅づくりに転身したのが始まりという京都の川端道喜(かわばたどうき)では、最高級の吉野葛で作り上げた粽を一つ一つ洛北産の笹で巻き上げ、い草でしっかりと美しく結びあげる伝統の形を継承。下鴨の製造販売元を訪ねると、運が良ければ5本1束の出来たて「水仙ちまき」を20分ほどで入手できます。ほんのりと温かく湿り気のある笹を解く時の快感は忘れがたし 🤣

こちらは、京都の鞍馬の峠を更に分け入った花脊の火祭り・松上げ(動画)。毎年8月15日(広河原地区は24日)に高さ20メートル近い灯籠木(とろぎ)が1本、その周りの川原や渓谷に高さ1.5メートルほどの地松(じまつ)が、約1,000本設置されます。初見では、これから何が起きるのかも想像できず固唾を飲みながら見守っています。陽はすっかり落ち満天に星が輝きだすと、地松に炎が次々と点火され会場周辺が幻想的に照らし出され、まるで野外劇場の様相。そして、夜9時を告げる合図と同時に男衆が縄のついた「上げ松」(松明・たいまつ)をくるくると廻しながら灯籠木の先端を目がけて投げ上げるのですが、暗闇に松明の炎が舞い上がり、そして落ちてくる何十本もの炎の乱舞に我ら観客の目は釘付けになります。

残念ながら、数多くの上げ松は、灯籠木の遙か下までしか上昇できなかったり、上端をかすめて、なかなか先端に着地しない。運良く引っ掛かっても、燃え移らず炎が消えてしまったり、燃え尽きてしまったりする。その度に観客から「あぁ〜」という落胆のため息が漏れる。その内、このまま朝まで火が付かなかったらどうなるんだろうと心配になったりします(笑)。その顛末は実際に見てのお楽しみですが、見物には折りたたみ椅子を持参すると楽チンです。近年は、京都市内から花背・広河原松上げ鑑賞バスが運行されるようになりましたが、僕らのような遠方客は、宿を花脊(美山荘燦喜庵、寺谷など)に求め、夕食後に松上げの会場までの送迎をお願いするのが良いと思います。

花背の宿にお世話になった翌朝は、こちらの大悲山・峰定寺に食後の散歩がてらに参拝。その後、京都市内を散策するのが恒例となっています。

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