鞆の浦

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船が櫓を漕ぎ、風や潮の流れに頼って運航されていた時代、瀬戸内海沿岸のほぼ中央に位置している鞆の浦は、柳井(山口)、竹原(広島)、下津井(岡山)などと並ぶ潮待ちの港町として栄え、今も昔ながらの風情を残す景勝地として人気。福山、尾道方面でイベントがある際にふらりと立ち寄っています。アイキャッチ画像は、鞆の浦と仙酔島を結ぶ航路に就航している平成いろは丸

因みに、村上水軍毛利水軍が元海賊として有名だけど、江戸時代までその末裔とみられる海賊が岡山市の犬島沖にも出没していました。彼らにとって、瀬戸内海の潮流に不慣れな帆船は明治期になるまで格好の獲物でした。そんな海賊たちも風待ち、潮待ちを余儀なくされることもある。そんな時は、女と酒と博打! とびきりの美女を船に誘い、美味い酒や肴を積んで海に漕ぎ出す時の高揚感は、今も昔も間違いなく「賊」の DNA を実感する瞬間なのだ(笑)。

因みに、瀬戸内の瀬戸は、狭門(せと)の意味で、両側の陸地が接近して海が狭くなっている所。鞆の浦周辺の海は潮の干満の差が特に大きく、大潮の時期は、3〜4mに達し、小舟にとっては恐ろしい激流が生じます。

碇造船所(2007)

2007年の夏、鞆の浦の常夜灯広場で写真を撮っていたら船大工の碇 侑(いかり すすむ)さんに声を掛けられ碇造船所に招かれ日本一長い櫓のコレクションなどを見せて貰いました。

こちらの右上画像は、食事処・「おてび」。屋根の上にあるのが店名の由来となった大手火。左上は、「いろは丸展示館」の蔵を所有、運営している保命酒の造り酒屋・中村家住宅(現・太田家住宅)の中庭。竹で四角く囲われた区画には、金蔵があったと推測されています。

右下は、2015年に放送された「流星ワゴン」のロケ地(丸忠総業)から臨んだ「朝宗亭」と「常夜灯」。「朝宗亭」は、「太田家住宅」の別邸。「常夜灯」は、北前船用の灯台として1859年に建造。ニシン油を光源にしていたそうです。左下は、常夜灯広場にある「いろは丸展示館」。2006年に行われたいろは丸の沈没調査で引き上げられた物品や関連資料が展示されています。

1867年4月19日、土佐藩参政・後藤象二郎(1838〜1897)から海援隊の隊長に任じられた坂本竜馬(1836〜1867)は、伊予国大洲藩(現・愛媛県大洲市)からチャーターした蒸気帆船・いろは丸(船価:4万2千5百両、一航海:15日間で500両)に鉄砲などの物資を積み長崎を出港。大坂を目指すも、4月23日の午後11時頃、瀬戸内海の六島沖で紀州藩の蒸気船・明光丸に衝突され大破、積荷もろとも鞆の浦沖に沈没してしまいます。海援隊としての初商いをフイにされ、船も失った坂本竜馬は激怒、明光丸の操船に非があると「万国公法」を論拠に補償を要求。紀州藩が用意した鞆の浦の魚屋萬蔵宅や対潮楼での交渉が決裂するなど紆余曲折ありますが、龍馬は最終的に長崎で賠償金7万両を手中にしました。

保命酒蔵(2010)

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展覧会:たくさんのえん(終了)
    内海卓雄のしごと
会 期:2024年10月10日(木)〜12月29日(日)
    10:00〜17:00
入場料:無料
会 場:鞆の津ミュージアム
    広島県福山市鞆町鞆 271-1
    084-970-5380

本展は、当館の母体・社会福祉法人 創樹会が運営する障害者支援施設「あゆみ苑成人寮」で暮らす内海卓雄(うつみ たくお)さんが生み出した様々な表現を一堂に集め、お伝えするものです。1957年生まれの内海さんは、聴覚に障害があるため声を通じた会話ができず、文字によるコミュニケーションも難しいのですが、持ち前の生活力と器用さとを存分にいかしながら、これまで多くの支援者や他の仲間たちと長らく暮らしを共にし、数々の多彩な創作的営みを日常的に続けてきました。

最も得意で愛好する手芸では、小物入れやバッグといった日用品をはじめ、ふぞろいな円形のパッチワークをあしらった丸くて四角いクッションから、平らな立体をつなぎ合わせた独自のぬいぐるみ人形まで、丁寧な裁縫でいろいろとつくりあげていきます。それらの数は膨大なものですが、生地の縁を縫い合わすその針と糸さばきには驚くばかり。使う道具は布やテープでくるみ、自分好みにカスタマイズ。家の絵をよく描いていた時期もありました。はたまた模写をすれば、絶妙なバランスをしたかたちや文字が現れ出ます。図像に沿ってカットした紙類の切り貼りからはスクラップブックが増えていく。合間をぬってパズルに掃除、その他もろもろ。常に何やらすることだらけ。毎日忙しく手を動すうちに、その日その日が終わり、いつの間にか歳をとる。

「楽しんで!」と伝える時に、英語では「Enjoy yourself!」とも言うそうですが、誰にとっても、暇や退屈という深い淵を前に自分自身を喜ばせる術を知っていることは、生きるうえでこのうえもなく大切なこと。そんなふうに、自分以外の誰に宛てられるわけでもなく延々と繰り返される活動の中で生まれたチャーミングな物体が、そうでなければ縁遠かったはずの人と人を結びつけ、誰かの喜びにつながることもあるのだから、創作というのは不思議なものとしかいいようがありません。今日も内海さんは何かに没頭し、たのしい時間をつくっています。

鞆の浦 de ART(2012)

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:鞆の浦 de アート 2024(終了)
会 期:2023年9月29日(日)〜10月20日(日)
    9:00〜17:00
企 画:ヨシダコウブン
入場料:無料
会 場:福山市鞆の浦・一円
    広島県福山市鞆地区
    084-921-2349(福山商工会議所)

鞆の浦(とものうら)町全体を舞台に歴史的建造物と現代アートの展覧会「鞆の浦 de ART」イベントを開催しています。かつて潮待ちの港として栄えた歴史ある鞆の浦の町並みを散策しながら様々なジャンルのアーティストによるアート作品をお楽しみください。フォトコンテスト同時開催中です。作品と一緒に [ #鞆アート2024 ] で投稿ください!

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