鞆の浦にて

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瀬戸内海沿岸のほぼ中央に位置し潮待ちの港として栄え、今日の瀬戸内・海の路ネットワークのハブとしても柳井(山口)、竹原(広島)、下津井(岡山)などと並ぶ重要な港町・鞆の浦(広島)は、昔ながらの風情を残す人気の景勝地。福山、尾道方面でイベントがある際にふらりと立ち寄っています。アイキャッチ画像は、鞆の浦と仙酔島を結ぶ航路に就航している平成いろは丸。

因みに、村上水軍毛利水軍は元海賊として有名だけど、江戸時代までその末裔とみられる海賊が岡山市の犬島沖にも出没していました。彼らにとって、櫓を漕ぎ、風や潮の流れを利用する帆船が主流で瀬戸内海の潮流に不慣れな商船は明治期になるまで格好の獲物でした。そんな海賊たちも風待ち、潮待ちを余儀なくされることもある。そんな時は、女と酒と博打! とびきりの美女を船に誘い、美味い酒や肴を積んで海に漕ぎ出す時の高揚感は、今も昔も間違いなく「賊」の DNA を実感する瞬間なのだ(笑)。

碇造船所(2007)

鞆の浦の常夜灯広場で写真を撮っていたら船大工の碇 侑(いかり すすむ)さんに声を掛けられ碇造船所に招かれ日本一長い櫓のコレクションなどを見せて貰いました。因みに、瀬戸内の瀬戸は、狭門(せと)の意味で、両側の陸地が接近して海が狭くなっている所。鞆の浦周辺の海は、瀬戸内海の丁度中心部なので潮の干満の差が特に大きく、大潮の時期は、3〜4mに達し、小舟にとっては恐ろしい激流が生じます。

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:日曜の制作学
会 期:2023年8月20日(日)〜12月30日(土)
    10:00〜17:00
入場料:無料
会 場:鞆の津ミュージアム
    広島県福山市鞆町鞆 271-1
    084-970-5380

休日や空いた時間を利用して、趣味の活動に没頭する。あるいは、理想にぴったりの製品が見つからないので自分好みにDIYでつくってみたり、日曜画家となって絵筆を動かす。はたまた、とりこになったつくり手の作品を蒐集すべく、古書店や骨董市へ定期的に通う。そんなふうに、与えられた環境では満足できず、自分でも何かをやってみたという経験は誰にでも一度はあるのではないでしょうか。

もちろん、私たち庶民という「無名」のつくり手が暮らしの中で生み出すそれらの小さな表現はプライベートなものであるがゆえ、他の誰かに知られる機会は多くありません。そもそも、広く発表することが念頭におかれていないものも少なくないでしょう。ほかならぬ自分自身の喜びにもっぱら仕える表現は、つくり手それぞれの人生を刻み込んだまま、あちこちで無数に眠っているというわけです。

絵を描く・工作をする・歌を唄う・音を奏でる・服を編む・物を集める・店に通う、などなど。本展は、そのような、学校・仕事・家事・育児といった人生その時その時で軸となる営みの「外」で生まれた様々な表現をお伝えするものです。それらは、つくり手が自らの社会的役割から解き放たれる放課後や休日や合間や暇を費やして夢中となったこと、すなわち、文字通り〈日曜〉における創造の賜物。であると同時に、それなしでは得られないごく個人的な快楽と幸福を作者自身にもたらすという意味では、(他人のことはいざ知らず)心の底から安らげる時間としての〈日曜〉をつくることでもあるといえるのかもしれません。

私たちの生存をひそかに支える〈日曜〉の制作にふれる機会をつくること。それが本展のねらいのひとつです。何かと忙しいこの世の中でわずかでもたのしく生きのびていくためには、決して「不要不急」などではありえない、それ自体が生きることの中心を占めるような遊びや休息が必須なのではないでしょうか。

こちらの右上画像は、食事処・「おてび」。屋根の上にあるのが店名の由来となった大手火

常々、養殖場で働いている人たちから「養殖魚を食べたらダメだよ。長生きしたかったら小魚を食べなさい」と聞かされてきた。マグロやカジキなど食物連鎖の上位を占める魚類の水銀汚染、鯛やヒラメ、フグなど養殖魚の抗生物質・抗菌剤残留、養殖場の薬害(ホルマリンなど)は疑いようもない。地元の漁港で、漁から帰ってきた知り合いの漁船に近寄って微笑みかければ、「好きなだけ持って帰れ!」と分けていただく小魚たち。市場で値が付かないって信じられません。

右下は、2015年に放送された「流星ワゴン」のロケ地(丸忠総業)から臨んだ「朝宗亭」と「常夜灯」。「朝宗亭」は、「太田家住宅」の別邸。「常夜灯」は、北前船用の灯台として1859年に建造。ニシン油を光源にしていたそうです。左下は、常夜灯広場にある「いろは丸展示館」。2006年に行われたいろは丸の沈没調査で引き上げられた物品や関連資料が展示されています。

1867年4月19日、土佐藩参政・後藤象二郎から海援隊の隊長に任じられた坂本竜馬は、伊予国大洲藩(現・愛媛県大洲市)からチャーターした蒸気帆船・いろは丸(船価:4万2千5百両、一航海:15日間で500両)に鉄砲などの物資を積み長崎を出港。大坂を目指すも、4月23日の午後11時頃、瀬戸内海の六島沖で紀州藩の蒸気船・明光丸に衝突され大破、積荷もろとも鞆の浦沖に沈没してしまいます。

海援隊としての初商いをフイにされ、船も失った坂本竜馬は激怒、明光丸の操船に非があると「万国公法」を論拠に補償を要求。紀州藩が用意した鞆の浦の魚屋萬蔵宅や対潮楼での交渉が決裂するなど紆余曲折ありますが、龍馬は最終的に長崎で賠償金7万両を手中にしました。

左上は、「いろは丸展示館」の蔵を所有、運営している保命酒の造り酒屋・中村家住宅(現・太田家住宅)の中庭。竹で四角く囲われた区画には、金蔵があったと推測されています。

保命酒蔵(2010)

NEWS! ご案内をいただきました 🤣

企画展:鞆の浦 de アート 2023
会 期:2023年9月24日(日)〜10月15日(日)
    9:00〜17:00
企 画:ヨシダコウブン
入場料:無料
会 場:福山市鞆の浦・一円
    広島県福山市鞆地区
    084-921-2349(福山商工会議所)

歴史的建造物の残る鞆の浦町全体を舞台に現代アートの展覧会・鞆の浦 de ART を開催します。かつて潮待ちの港として栄えた歴史ある鞆の浦の町並みを散策しながら様々なジャンルのアーティストによるアート作品、イベントをお楽しみください。

鞆の浦 de ART(2012)

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